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セミナー参加者池田翠さんの結婚までの黒歴史を連載しております。
受験・就職に失敗し「こんなはずじゃなかった」といつも思っている翠さん。
勝ち組になるために会社を辞めてネットワークビジネスを始めるも売り上げを作れず、
水商売、サラ金と転落を重ねていきます。
親に借金を肩代わりしてもらい、契約社員として働き始めたころこのブログを知り、
毛玉のついた服を捨て、身だしなみを整え、片づけを始めたら男性の紹介が増えたのでした。
ところが、紹介される男性とはうまくいかず、街コンは惨敗。
ある日社内の男性・神山から食事に誘われます。
昨日のお話
http://ameblo.jp/koakuma-mt/entry-12003268078.html
第1話から読む場合
http://ameblo.jp/koakuma-mt/entry-11996109890.html
第2話
http://ameblo.jp/koakuma-mt/entry-11996647710.html
↓↓↓
その頃、上司から12月の正社員登用試験があるから受けてみないかと打診された。
筆記試験、英語、面接もあり、狭き門らしい。
神山に相談すると、
「池田さんは、これからどうしていきたいの？」
「ありがたい話だし、この年で正社員になれるならなりたいよ」
「じゃ、受けてみたら。僕が教えてあげるよ」
と応援してくれた。
神山の家で勉強を教えてもらうことになった。
「え！このマンションに住んでるの？」
「うん」
駅から徒歩5分程度のキレイなマンションが神山の家だった。
「ここ家賃っていくらくらい？」
「賃貸じゃなくて買ったの。毎月の家賃がもったいないし。
友だちが不動産に詳しくて、ここならいずれ売るにしても売れそうだから」
「へ～、マンションもってるんだ。すごいね」
部屋はよく片付いた３LDK。
食器がたくさんあって、ちゃんと料理もしているようだ。
付き合いだして、よく知るようになると神山は見直すところが多い。
一緒にいると安心するし、背が小さいとか告白された時に気にしていたことが気にならなくなった。
あそこのお店は美味しいとか、同じ部署の同僚に子どもが生まれたとか、
日常の小さな幸せなネタをいつも報告してくる。
本当にいい人だなぁと思うようになった。
30代で仕事の合間に勉強するのは大変だった。
20代と比べて、時間もあっという間に過ぎていく。
まだ先だと思っていた受験日はどんどん近付いてきた。
翠より忙しいのに勉強を教えてくれた神山のためにも合格したいけれど、
もっと若い人が受験しているのを見て自信がなくなった。
受験後に、神山と食事に行く約束をしていた。
「今日はどうだった？」
「やるだけやったから、なるようにしかならないよね。
でも推薦してくれる人がいたり、
応援してくれる人がいて、
この会社にいて恵まれてるって思ったの」
いつも足りない方にばかり目を向けていた昔とは違っていた。
「そっか。
あのさぁ、
池田さん、僕と結婚して」
神山はいつも話の流れを無視した提案をする。
それもだんだん慣れてきた。
「うん、いいよ」
年末に、翠と神山は入籍した。
初めて徳島の両親に会わせたときに、とてもいい人だと喜んでいた。
結婚の報告を友人たちにした。
みんなが喜んでくれた。
連絡を取るか迷ったけれど、共通の友だちも多いので瑠利子にもメールをした。
――久しぶり。この度、結婚することになりました。今度、神山翠になります――
――おめでとう～。ところで、新商品のセミナーがあるんだけど来ない？――
瑠利子は相変らずだ。
結婚報告のメールの返信で、勧誘するってどんな根性なんだろう。
（それに引っかかったかつての私もどんな頭をしていたんだろう）
社員登用試験の結果は残念ながら不合格だったけれど、
会社に感謝しながら次のチャンスを待つことにした。
この話を書き終わって翠さんに原稿を見てもらったときに、
もう一つ教えてもらったことがあります。
「神山ベイビーを授かりました。
本当に近くにいて見てくれている人に気が付けて良かった。
私みたいな無いものねだりばかりしているイタイ女が一人でも減るといいですね」
（完）
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